Ethernet(イーサネット)技術コラム
近年、車両の電動化が進んでおり、エンジン系統、ボデー系統、制御系統、その他さまざまな箇所でECU(Electronic Control Unit)が搭載されています。
それぞれのECUは車載ネットワーク上で相互接続しし通信を行います。
車の高性能化に伴い、将来的数Gbpsの通信速度を持つ車載Ethernetが検討されています。
車載ネットワーク
従来の車載ネットワーク
車両通信プロトコルは、CAN (Controller Area Network)、LIN (Local Interconnect Network)、MOST (Media Oriented System Transport)、FlexRay、CAN FDが挙げられ、その中でもCAN及びLINが主に使用されます。
CANは最大1Mbpsで、マルチマスタ方式で通信します。マルチマスタ方式とは、CANバスが空いているときに各ECUが通信を開始可能な方式です。
LINは最大20kbpsで、マスタースレイブ方式で通信します。
マスタースレイブ方式とは、LINバスに接続されているECUを動作させる際に一つが管理・制御する側、残りが制御される側という役割分担を行う方式です。 LINは通信速度が遅い一方で、安価という利点があります。
異なる通信プロトコル間通信をするためにゲートウェイECUを用います。複数ゲートウェイを通過した通信ではデータ遅延が生じる可能性があります。遅延を防ぐために各ゲートウェイを統合し、各機能系統を1つのゲートウェイに接続ものがセントラルゲートウェイ(CGW)です。
将来の車載ネットワーク
現在、自動運転やADAS、IVIの開発が進められており、通信速度の観点でCAN及びLINプロトコルのみでは、ADASやIVIの機能を実現することは極めて難しいです。センサー解像度の向上による通信データ量の増加や、ECU搭載量の増大による車載ネットワークの複雑化などの問題を解決するため、車両の中央に高性能なメインECUを、各領域ごとにゾーンECUを配置した車載ネットワークが注目されています。
そのネットワークの各ECU間を接続する際に取り入れられたのがEthernetです。広帯域幅かつ低遅延の次世代車載ネットワークが実現可能な、車載Ethernetに対する関心が高まっています。
Ethernet(イーサネット)
Ethernet(イーサネット)とは、コンピューターやネットワーク機器同士が通信するための有線LAN(Local Area Network)の規格です。主に室内や工場などの建物内で使用されます。Ethernetは高速伝送可能で、ノイズに強く、信頼性のあるデータを送信し、比較的低コストといった利点があります。これらのメリットにより、Ethernetは広く利用される標準的なネットワーク規格(IEEE802.3)となっています。他の通信技術と比較しても、汎用性、速度、信頼性、経済性、柔軟性が優れているため、多くの環境で利用されています。
IEEE802.3
IEEE802.3はLAN(Local Area Network)およびMAN(Metro Area Network)の国際的な規格です。
ネットワーク内での通信を制御するMAC(Media Access Control)の仕様と、ネットワーク状態及び設定を格納するデータベースを定義します。データ通信の項目ではEthernetプロトコルのフレームを定義しています。
また、MAC層と物理層デバイスのPHY間を通信するMII(media-independent interface)についても定義されています。その他には制御/管理プロトコル、電力供給について定義されています。
一般表記
イーサネットには多数の種類が存在するため、一見で機能が判別できる規格名がつけられています。一般的に物理層は以下のような表記方法で命名されています。
〈データレート〉〈変調方式〉〈 詳細 〉
〈 100 〉〈 BASE 〉〈 -TX 〉
データレートは数値のみの場合はMb/s単位、末尾に「G」が付く場合はGb/s単位となります。
変調方式は、エンコードされたデータが媒体上でどのように送信されるかを示します。変調方式は主にベースバンド方式の「BASE」が用いられます。詳細は伝送の特性や媒体の特性などを示します。「T」はツイストペアケーブル、「T1」はシングルツイストペアケーブルを、「B」は双方向光線を示します。
伝送方式の違い
1000BASE-T1は車載Ethernet規格として確立されています。1000BASE-T1、1000BASE-TX、1000BASE-Tでは情報の伝送方式が異なります。
1000BASE-T1は、1本のツイストペアケーブルで1Gbpsのデータ通信を行います。ケーブルは送受信が可能であり、双方向通信を行います。
1000BASE-TXは、1本のツイストペアケーブルで500Mbpsのデータ通信を行います。4本のツイストペアケーブルのうち、2本を送信用、2本を受信に割り当てます
1000BASE-Tは、1本のツイストペアケーブルで250Mbpsのデータ通信を行います。ケーブルは送受信が可能であり、4本のツイストペアケーブル同時に双方向通信を行います。
車載Ethernet
通信方式
車載EthernetにおけるPHYの規格として100base-T1、1000base-T1が挙げられます。これらはIEEE802.3bw及びIEEE802.3bpで規定されています。どちらも1本のツイストペアケーブルで100Mbpsもしくは1GbpsでPHY同士通信を行います。民生Ethernetと大きな違いはEMIの低減、過酷な環境での動作保証、低消費電力、ケーブル長が挙げられます。
詳細のお問い合わせは下記のボタンよりお願いいたします。