車載Ethernetと品質基準 | Ethernet(イーサネット)技術コラム
電磁両立性(Electromagnetic Compatibility)
電磁両立性(EMC)とは、他のシステムからの電磁エミッションによって電磁的影響を受けない電磁イミュニティを持ち、自身の電磁エミッションによって他のシステムに電磁的障害を与えない事に関して規格化されているものです。前者は電磁感受性 (EMS:Electromagnetic Susceptibility) と呼び、後者は電磁波妨害 (EMI:Electromagnetic Interference) と呼ばれています。
電磁干渉の仕組み
あらゆる電子機器が、干渉源にも被干渉源にもなりえます。結合路に対して誘電もしくは場によって電磁干渉が起こります。場に対しても細分化でき、遠距離の放射、近距離の誘導があり、後者は磁界による誘導性の場合と電界による容量性の場合が存在します。この4つの電磁ノイズは共存することがあり、同時に機器に干渉します。
電流によるノイズ
意図しない信号エネルギー、主に高周波ノイズがケーブルを経由して機器に伝達します。フィルタリングを行うことでノイズ対策が可能です。
場(遠距離)によるノイズ
電磁波を用いて通信する携帯電話等がノイズ源として機器に伝達します。該当周波数に対してアンテナの動作を持つ回路に影響しやすいです。しかし、ノイズエネルギーは、車載のテスト規格値よりも通常大幅に小さくなります。
場(近距離)によるノイズ
場の変化が速く、周波数が高く、距離が近いほどノイズの影響が大きくなります。
容量性ノイズは、自分自身の導線と隣接した他システムの導線間に発生した電界によるノイズであり、一般的に高電圧線や通信トランシーバなどが干渉源となります。
誘導性ノイズは、干渉源のシステムから流れる電流による発生した磁界によるノイズであり、一般的に無線周波送信機などが干渉源となります。
Ethernetに関してシールド付きケーブルを使用する、ケーブルを撚る、干渉の可能性のあるケーブルの距離を離すことでノイズ対策が可能です。車載Ethernetの場合、比較的低コストな非シールドEthernetが好まれます。
ノイズに対する品質基準
EMC試験
EMCに関する規格は、ISO規格のみならず国内基準や各国の判断で使用されている基準、自動車メーカー独自の基準等、多数の規格が存在します。自動車業界においては、自動車メーカーにより採用する規格が異なります。対応する試験は半導体レベル、ECUレベル、車両レベルで実施されます。
イミュニティに関する試験方法は直接電力注入法(DPI)、エミッションに関する試験方法は150Ω法が挙げられます。車載Ethernetの100BASE-T1 ⁄ 1000BASE-T1の上記試験はどちらもOpen AllianceのEMC試験仕様に含まれています。Open Allianceについては 技術コラム:OpenAllianceとは で解説しています。
その他の品質基準
AEC-Q100
AEC-Q100とは、集積回路(IC)に対する故障メカニズムに基づくストレス テスト要件の手法を示す品質基準です。 AEC(Automotive Electronics Council)は共通の部品認定および品質システム基準を確立する目的で 設立された組織です。AEC-Q100はさらに細分化されており、試験手法等記載されています。
規格 | 内容 |
AEC-Q100-001 | ワイヤボンディングシェア試験 |
AEC-Q100-002 | 人体モデル(HBM)静電放電試験 |
AEC-Q100-003 | マシンモデル(MM)静電放電試験 |
AEC-Q100-004 | ICラッチアップ試験 |
AEC-Q100-005 | 不揮発性メモリのプログラミング ⁄ 消去耐性 ⁄ データ保持 ⁄ 耐用年数試験 |
AEC-Q100-006 | 電気的 ⁄ 熱的誘導による寄生ゲート漏洩試験 |
AEC-Q100-007 | 故障シミュレーションと試験のグレード分け |
AEC-Q100-008 | 初期故障率(ELFR) |
AEC-Q100-009 | 配電評価 |
AEC-Q100-010 | はんだシェア試験 |
AEC-Q100-011 | デバイス帯電モデル(CDM)静電放電試験 |
AEC-Q100-012 | スマートパワーデバイスの短絡信頼性特性(12Vシステム向け) |
また、電子部品が使用可能な温度範囲が分類されており、グレードが0から3の4つに分類されています。
グレード | 温度範囲 |
0 | -40℃~+150℃ |
1 | -40℃~+125℃ |
2 | -40℃~+105℃ |
3 | -40℃~+85℃ |
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