新LTspice③パラメトリック解析、公差解析 | アナログ・デバイセズ
LTspiceとは
Ltspiceとは、アナログ・デバイセズ社が無償提供するSPICEシミュレータです。
LTspiceは、回路定数選定に便利なパラメトリック解析や公差解析が可能なコマンドなど、多くのドットコマンドがあります。
ドットコマンド(Dot Commands)の確認方法
LTspice Helpにドットコマンドの説明があります。
LTspiceのツールバーから「Help」→「LTspice Help」を選択してLTspice Helpを開きます。
LTspice Helpの「Ltspice Simulator」→「Dot Commands」を選択します。
「.PARAM — User-Defined Parameters」にLTspiceに登録されている関数一覧もあります。
パラメトリック解析
「.step」コマンドを使用して、任意のパラメータを変化させてシミュレーションを行うことができます。
.stepコマンドを使用したシミュレーションの手順
- 1.変化させたいパラメータに変数{x}を入力します。
- 2.LTspiceツールバーの「SPICE Directive(.)」→Edit Text on the Schematicを開き、.stepコマンドの構文を入力します。
- 上図の構文は、変数xを1kΩ、2kΩ、3kΩに変化させます。
- 3.行いたい解析のシミュレーションを実施します。
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変数はList、線形、対数で変化させることが可能です。
List:.step param <パラメータ名> <値> <値> …
線形:.step param <パラメータ名> <初期値> <最終値> <増分>
例 .step param x 1k 10k 1k:パラメータxを1kから10kまで1kの間隔で変化させる
対数:.step oct(dec) param <パラメータ名> <初期値> <最終値> <対数区間内のポイント数>
例 .step dec param x 1k 10k 10:パラメータxを1kから10kまでディケード(10倍)あたり10分割で変化させる -
または、複数のパラメータを変数としてシミュレーションを行うこともできます。
- 上記は、2つの変数を総当たり(9通り)でシミュレーションを行います。
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.stepコマンドは、こちらも参照ください
LTspice:解析を繰り返し実行するために.STEPコマンドを利用する方法 | Analog Devices
公差解析
Ltspiceの公差解析には、ガウス分布とモンテカルロ分布を使用する方法があります。
ガウス分布(gauss(x)関数):正規分布
モンテカルロ分布(mc(x,y)関数):一様分布
gauss(x)関数 (ガウス分布)を使用したLtspiceの公差解析の手順
- 1.素子に{ <中心値>+gauss(<標準偏差>)}を入力します。
- 2.LTspiceツールバーの「SPICE Directive(.)」→ Edit Text on the Schematicを開き、.stepコマンドでシミュレーション回数を指定します。
- 3.行いたい解析のシミュレーションを実施します。
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中心値:1kΩ
標準偏差:42.6Ω(10%を半値全幅として、σ=半値全幅/2.35で算出)
シミュレーション回数:1001
一様分布:{mc(1k,tol)} 1kΩ±100Ω tol=0.1とし±100Ωとする
正規分布:{1k+gauss(42.6)} 標準偏差 42.6Ω 半値全幅のσを利用
標準偏差の算出は、±100Ωの半分の±50Ω分(100Ωの幅)を半値全幅として、σ=半値全幅/2.35の関係を用いて、σ=100Ω/2.35=42.6Ωを利用
10%を半値全幅として、σ=半値全幅/2.35で算出 - 1.素子に{mc(<平均値>,<公差>)}を入力します。
- 2.LTspiceツールバーの「SPICE Directive(.)」→ Edit Text on the Schematicを開き、.stepコマンドでシミュレーション回数を指定します。
- 3.行いたい解析のシミュレーションを実施します。
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平均値:1kΩ
公差:10%
シミュレーション回数:1001 -
公差解析については、アナログ・デバイセズの公式ページも参照いただけます。
LTspiceを使用し、複雑な回路を対象とする統計的な公差解析用のモデルを構築する | Analog Devices