LED ⁄ レーザー 技術コラム

LED用語集

はじめに

LEDの選定をしようとすると、使用用途に限らず、部品サイズ以外にも、波長や色などさまざまな項目を確認することが必要になります。
本コラムでは、LEDのデータシートをチェックする際に、認識する必要がある用語について解説します。
ぜひ、LED選定の際や、学習にお役立てください。

動作温度・ジャンクション温度

LEDの性能や寿命を引き出すためには、温度管理が非常に重要です。
特に動作温度、ジャンクション温度という2つの温度指標はLEDに対して大きな影響を与えます。

動作温度

LEDにおける動作温度とは、LEDの正常動作を保証する温度範囲のことです。Operating TemperatureやTopと表されることもあります。
動作温度の範囲外でLEDを駆動させると、性能低下や故障のリスクがあります。

ジャンクション温度

LEDにおけるジャンクション温度とは、LEDチップ内の半導体接合部における温度のことです。Junction TemperatureやTjとも表されます。LEDに順電流を流すと、エネルギーは光と熱に分かれるため、チップの温度が上昇します。
チップ温度が高温になると、チップそのもの損傷やチップ - 電極間のワイヤーが切断されるといったリスクがあるため、最大ジャンクション温度を超えないようにLEDを運用する必要があります。
外部から直接ジャンクション温度を測ることは難しいため、ソルダーパット部の温度、熱抵抗、投入電力、光エネルギーからジャンクション温度を推定します。

熱抵抗

LEDは、高効率な光源ですが、発光する際には熱が発生します。
この熱を適切に管理しなければ、LEDの性能低下や損傷といった不具合を引き起こします。ここで重要になってくるのが「熱抵抗」という考え方です。

Rth realとRth el

先述した通り、LEDに電流を流すと熱が発生します。この際、放熱経路について熱抵抗回路で考えた時の熱の逃げやすさを表したものを「熱抵抗[Rth]」と呼びます。
どの区間のにおける熱抵抗かによって、RthJSやRthJAというように添え字が追記されます。
また、熱抵抗にはRth elとRth realの2種類があります。
Rth elは、ある代表値の発光効率を加味したLEDの熱抵抗で、Rth realは、発光効率に影響されない熱抵抗を表します。
一般的に、発光効率は電流、ジャンクション温度、明るさランク、順方向電圧、寿命によって変動していくためこれらに応じてRth elは、時間経過とともに増加していきます。一方、Rth realはLEDの物性が一定である限り変化しない値です。

  • 熱抵抗解説図

光の単位

光に関する単位には、人が感じる明るさを表した値とそれ以外のものまで含めて物理的な値として表したものの2種類があります。
これは、光の持つエネルギーが等価であっても人間の目には波長によって感じる明るさが異なるためです。
車のライトや照明といったものでは、「人が感じる明るさの単位」が、赤外線カメラなど可視領域外のものには、「光のエネルギーを表す単位」が主に使用されます。

光束と光度、照度、輝度

人が感じる明るさの単位を解説します。それぞれ、異なる場面に適しており、使い分けられています。

光束

光束とは、光源から出る光の総量のことで、単位はlm(ルーメン)です。
主な活用シーン:インテリア等の照明

光度

光度とは、光源からある方向へ放射される光の量を表したものです。光束を立体角で割った値であり、単位はcd(カンデラ)です。
主な活用シーン:車のインジケータ等

照度

照度とは、物体の表面を照らす光に関する物理量のことであり、ある面にどれだけの光が到達しているかを表します。光束を面積で割った値であり、単位はlx(ルクス) = lm ⁄ m2です。このため、光源から距離が離れるほど照度は小さくなります。
主な活用シーン:オフィス等の照明設計

輝度

輝度とは光源そのものの光や、それに照らされた面の光がどれだけ人の目に届いているかを表す値であり対象がどれだけ眩しいかを表します。光度を単位面積で割った値で、単位はnit(ニト) = cd ⁄ m2です。
主な活用シーン:ディスプレイの明るさの評価

  • 光束と光度、照度、輝度の解説図

放射束と放射強度

放射束、放射強度は、光のエネルギーを表す物理量です。

放射束

放射束は、光源から放射されるエネルギー量のことで、単位はW(ワット)です。

放射強度

放射強度は、光源からある方向へ放射される光のエネルギーを表したものです。放射束を立体角で割った値であり、単位はW ⁄ Srです。

視感度特性と光の波長

欲しい色を適切に選択するために、LED選定の際は光学特性を理解することが重要です。
特に人間の目からの見え方とLEDの波長は、色を選択する際の重要な要素です。

視感度特性

視感度特性とは、光を人間の目で見た際にどのような反応をするか示した特性のことです。
人によって明るさの感じ方は異なるため、標準的な視感度というものが国際機関により規定されました。
最も明るく見える時を1として、視覚感度が波長に応じてどのような変化をするかを曲線で示したものを比視感度曲線といいます。
明所ではおおよそ555nm付近がもっとも強く光を感じ、暗所では波長がやや短波長側にずれます。

  • 比視感度曲線グラフ
  • 光のスペクトル

    外で感じる太陽光や室内照明など、私たちが普段感じている光には様々な波長の光が混ざっています。
    どの波長成分がどれだけの強度を持っているかについてグラフにしたものを、スペクトルと呼びます。

ドミナント波長とピーク波長

LEDのデータシートを見ていくとドミナント波長とピーク波長の2つの波長について記載されています。
ピーク波長とは光源から出てくる光が最も強くなる点での波長のことです。一方、ドミナント波長とはある光源を見たときに人が感じる色での波長です。ピーク波長を色として認識する訳ではないことに注意が必要です。

  • VISIBLE SPECTRUM
  • 比視感度曲線とLEDのグラフ

LEDの色

単色であれば波長から色を選定することができますが、さまざまな色が混ざっているような場合、波長のみでは定量的にどのような色か判断することが難しいです。
このような場合、LEDの色を選定する際には、先述したLEDの波長の他にも確認すべき点があります。

  • 色温度と色度、演色性

    色温度

    色温度は、主に照明に使用されるLEDの評価をする際に用いられます。
    K(ケルビン)という単位で表されます。黒体という光をすべて吸収し外部からの光を反射しない理想物体をモデルとして考えます。黒体は温度が上がると特定波長の光を放出すると考えられ、各温度における黒体の色を基準としています。色温度が低いほど赤く、温度が上がるにつれ白へ変化していきます。さらに色温度が高い領域では青白い色合いを表現します。シーリングライトのような照明を購入する際に色温度に関する記述を確認することができます。

    色度

    色度とは、色を座標空間に置き、2次元座標系(Cx, Cy)で表したのもです。代表的なものとしてCIE1931色空間というものがあります。
    例えば白色であれば(Cx, Cy)=(0.33, 0.33)と表現されます。

    演色性

    演色性とは、光源が物体の色をどれだけ自然に再現できるかを示す特性です。演色性が高い光源は、物体の色をより正確に、自然に見せることができます。
    演色性を数値的に評価する指標としてColor Rendering Index(CRI), Raがあります。
    CRIは0から100の範囲で表され、100に近いほど自然光に近い色再現性を持つことを意味します。
    Raは、8つの標準色サンプルに基づく評価で、8つの数値の平均値です。

    黒体の色が温度によって変化することを示した図 色温度と色度、演色性を明示したカラーグラフ

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