技術コラム

BLEの仕組みや活用方法
BLEとは何?Bluetooth Low Energyの特徴と活用方法を徹底解説! 

概要
Bluetooth Low Energy(BLE)は低消費電力を重視した無線通信技術で、特にIoTやウェアラブルデバイスに広く利用されています。本コラムでは、BLEの基本概念、低消費電力の実現方法、通信距離とプロファイル、さらに最新技術動向や市場動向について、詳しく解説します。

BLE (Bluetooth Low Energy)とは何か

Bluetooth(ブルートゥース)とは、短距離無線通信技術の一つで、ケーブルを使わずにデバイス同士を接続するための技術です。
1994年にエリクソン社が開発し、その後、Bluetooth Special Interest Group(SIG)という団体が標準化を進めています。現在では、スマートフォン、タブレット、パソコン、ヘッドホン、スピーカー、スマートウォッチなど、さまざまなデバイスで広く利用されています。

BLEが低消費電力を実現した方法

BLEが低消費電力を実現できる理由は、その設計と動作特性にあります。以下の要素が、BLEの低消費電力を支えています。

  • アドバタイズとスキャンの効率化
    BLEデバイスは、アドバタイズとスキャンという2つの主要なアクションを効率的に行います。アドバタイズは短時間で行われ、スキャンは必要なときだけ実行されるため、無駄な電力消費が抑えられます。
  • 短い接続時間
    BLEは、接続の確立までが非常に短時間です。接続時間が短いため、接続中の電力消費が最小限に抑えられます。また、周波数ホッピングという通信方式を使うことで、周辺機器との通信衝突を低減しています。これにより、データの送受信が迅速に行われ、アイドル状態に戻る時間が短くなります。
  • 省電力モード
    BLEデバイスは、アイドル状態やスリープモードを活用することで、消費電力を大幅に削減します。これにより、デバイスが使用されていないときの電力消費が最小限に抑えられます。
  • 低電波出力
    出力を低く抑えられることで、消費電力を抑えることが可能になりました。ただしこの特徴を生かすには、アプリケーションとして通信データ容量が少ないものに限られます。
  • BLEが低消費電力の理由についてはこちら(技術ブログ 近日公開予定)

BLEの通信距離とプロファイル

BLEの通信距離は、環境やデバイスの仕様によりますが、一般的には10メートル程度です。障害物の有無や電波干渉の影響を受けるため、実際の通信距離は変動します。
BLEには、特定の用途に応じた「プロファイル」が定義されています。これにより、異なるデバイス間での互換性が確保されます。以下は代表的なプロファイルです。

  • Advanced Audio Distribution Profile (A2DP)
    高品質なオーディオストリーミングを提供するプロファイルです。スマートフォンやタブレットなどのデバイスからイヤフォンやヘッドセットに音楽を送信するために使用されます。
  • Audio/Video Remote Control Profile (AVRCP)
    オーディオやビデオ機器のリモートコントロールを可能にするプロファイルです。再生、一時停止、スキップなどの操作をイヤフォンやヘッドセットから直接行うことができます。
  • Hands-Free Profile (HFP)
    通話機能を提供するプロファイルです。スマートフォンとイヤフォンを接続してハンズフリー通話を行うために使用されます。

BLEの活用方法

BLEのIoTへの活用法

BLEは、IoT(Internet of Things)デバイスにおいて非常に重要な役割を果たしています。低消費電力と高い互換性により、以下のような用途で広く利用されています。

  • スマートホーム
    BLEを利用して、家の状況、温度調節、セキュリティシステムなどを自動化・制御・管理できます。例えば、ドアや窓の開閉を検知し、スマートフォンに通知を送ります。また、スマートフォンからドアのロックとアンロックを行うことができます。リモートアクセスや自動ロック/アンロック機能も提供されます。
  • ヘルスケア
    スマートウォッチが代表例です。フィットネストラッカー、心拍計、血圧計など、さまざまな医療機器やウェアラブルデバイスと簡単に接続できます。これにより、リアルタイムで健康データを収集し、モニタリングすることが可能です。非常に低い消費電力で動作するため、バッテリー駆動のデバイスが長時間使用できます。これにより、患者やユーザーは頻繁にバッテリーを交換する必要がなく、デバイスを日常的に使用しやすくなります。
  • ビーコン
    ビーコンは、定期的に信号を発信するデバイスで、周囲のBLE対応デバイス(スマートフォンやタブレットなど)に対して位置情報や特定のデータを送信します。これにより、ユーザーはビーコンの近くにいることを認識し、関連する情報を受け取ることができます。例えば、「スマートタグ」と呼ばれる製品は、位置追跡や、離れるとアラートを出します。日常生活の中で物品の紛失を防ぎ、管理するための便利なツールとして利用されています。

BLEの最新技術動向

BLEバージョンの最新情報

BLEは、バージョンアップにより新機能や性能向上が図られています。以下は、最近のバージョン、Bluetooth 5シリーズの情報です。

  • Bluetooth 5.0
    このバージョンでは、データ通信速度が2倍になり、より速くデータを送受信できるようになりました。これは、物理レイヤに2Mbpsの変調方式を追加したことによるものです。また、新しい技術の採用により、通信範囲が広がり、デバイス同士が離れていても安定した接続が可能になりました。さらに、Bluetooth 5.0では、メッシュネットワークという構成を確立できるようになり、複数のデバイスが互いに通信できるようになりました。
  • Bluetooth 5.1
    Bluetooth 5.1では、新しい方向探知技術が追加され、Bluetoothデバイスの位置をより正確に特定できるようになりました。これにより、ナビゲーションや持ち物探索などの位置情報サービスが向上しました。また、アドバタイズ(デバイスの存在を知らせる信号)機能の効率が向上しました。さらに、他のBluetoothデバイスから間接的にアドバタイズ情報を同期できるようになり、情報の共有がスムーズになりました。
  • Bluetooth 5.2
    Bluetooth 5.2では、新しいオーディオ技術であるLE Audioが導入され、Bluetoothイヤホンなどの音質が向上しました。また、複数のデバイスに同時に接続し、音声を送信できるようになりました。さらに、音声やビデオのリアルタイム伝送がより正確になりました。通信時の消費電力を削減できる制御により、バッテリーの持ちが良くなりました。
  • Bluetooth 5.3
    Bluetooth 5.3では、デバイスの小型化や長時間稼働を目的とした機能が追加されました。メインデバイスとの通信を削減し、効率が向上しました。また、無通信期間に通信間隔を広くでき、さらに省電力化が進みました。
  • Bluetooth 5.4
    Bluetooth 5.4では、アドバタイズ通信方式が拡張され、電子棚札などのアプリケーションに対応できるようになりました。アドバタイズ通信が双方向に対応しました。また、アドバタイズ自体を暗号化できるようになり、セキュリティが強化されました。最後に、ペアリング時にセキュリティがかかっているかどうかを確認できるようになりました。
  • Bluetooth 6.0
    Bluetooth 6.0は、2024年8月に仕様が公開されました。距離計算の精度や、セキュリティ面での強化が行われ、デジタルキー等のアプリケーションにも貢献します。
  • Bluetooth 5ついての解説はこちら(技術ブログ 近日公開予定)

BLE(ver.5.0~)デバイスの新機能と仕様変更

最新のBLEデバイスには、上記Bluetooth 5のバージョンで追加された機能を用いて、以下のような新機能や仕様変更が追加されています。

  • 通信範囲の拡大
    Bluetooth 5のバージョンでは、従来のBluetoothよりも通信範囲が最大で4倍に拡大されました。通信速度は1/8になってしまいますが、より広範囲のデバイスと接続が出来るようになりました。
  • データ転送速度の向上
    データ転送速度が最大で2倍になり、大容量のデータをより迅速に送信できます。通信距離は約0.8倍になってしまいますが、その分近距離では大容量通信が出来るようになりました。
  • 複数デバイスへの接続
    複数のデバイスに同時に接続できる機能が強化され、より多くのデバイスを同時に管理できます。
  • 位置情報サービス
    方向探知機能が追加され、より正確な位置情報サービスが提供されるようになりました。これにより、屋内ナビゲーションなどが可能になりました。
  • LE Audioのサポート
    LE Audioが導入され、低消費電力でのオーディオストリーミングが可能になりました。これにより、補聴器やワイヤレスイヤフォンの性能が向上しました。また、複数のオーディオストリームを同時にサポートします。

BLEの市場動向

BLEの市場は、IoTデバイスやウェアラブルデバイスの普及に伴い、急速に拡大しています。

  • IoTの普及
    近年スーパーで見かけるようになった電子棚札や、紛失防止のスマートタグなど、BLEデバイスの需要が増加しています。
  • ヘルスケア分野の成長
    スマートウォッチをはじめ、スポーツや医療機器などの分野での、BLEデバイスの利用は益々拡大しています。/アンロック機能も提供されます。
  • 新技術の導入
    LE Audioや方向検知機能、セキュリティの強化など、新技術の導入により、BLEデバイスの性能が向上しています。今後出てくる新たな製品にもBLEは搭載され、さらなる市場拡大が期待されています。/アンロック機能も提供されます。

まとめ

BLEは、低消費電力と高い互換性を持つ無線通信技術として、IoTやウェアラブルデバイスにおいて重要な役割を果たしています。通信の効率化、短い接続時間、省電力モードなどにより、効果的に低消費電力を実現しています。さらに、Bluetooth 5シリーズの新機能や市場動向を通じて、BLEの進化とその応用範囲が広がっていることがわかります。今後もBLE技術の発展により、より多くのデバイスが効率的かつ効果的に通信できるようになるでしょう。