WiFiとは?WiFiの基本知識 | 技術コラム
本コラムでは、既に多くの方に利用されているWiFiの基本知識について解説します。
今回は、WiFiの基本知識ということで、
・WiFi基本概要:「WiFiとは何か」、「WiFiの歴史と進化」
・WiFiの技術的な基礎:「無線通信の基礎」、「周波数帯とチャネル幅」
にフォーカスします。
WiFiの基本概要
WiFiとは何か
WiFiとは、無線・ワイヤレス通信技術の一種で、無線LAN (Wireless Local Area Network) としても知られています。
WiFiは、電波(電磁波)を使ってデバイス間でデータを送受信し、有線接続なしでインターネットにアクセスできるようにする技術です。WiFiは、パソコン、スマートフォン、タブレット、スマートホームデバイスなど、さまざまなデバイスで利用され、日常生活やビジネスにおいて不可欠な存在です。
WiFiの利用には、通常、ルーターやアクセスポイントと呼ばれるデバイスが必要です。これらのデバイスは、インターネットサービスプロバイダー
(ISP) から提供されるインターネット接続を受信し、それを無線信号として周囲のデバイスに送信します。WiFiの範囲はデバイスの性能や環境に依存しますが、一般的には家庭やオフィス全体をカバーすることができます。
使用例:
- パソコン
- スマートフォン
- タブレット
- スマートホームデバイス
補足情報/電波(電磁波):
電波は、電磁波スペクトルの中で最も低い周波数帯域に位置する電磁波の一種です。通常、電波は数Hzから数GHzの周波数範囲に属し、無線通信に広く利用されています。
電波は、以下の用途で利用されます。
- WiFi/無線LAN
- ラジオ放送
- テレビ放送
- 携帯電話通信
- 衛星通信
- レーダー
WiFiの歴史と進化
WiFiの歴史は1985年にさかのぼります。
1985年、米国連邦通信委員会 (FCC) がISM (Industrial, Scientific, and Medical) バンドを商用利用に開放したことが始まりです。これにより、無線通信技術の開発が加速し、WiFiの基盤が築かれました。
1997年には、IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers) によって最初のWiFi標準であるIEEE802.11が策定されました。この標準は、最大2Mbpsのデータ転送速度を提供し、ワイヤレスネットワーキングの基本を確立しました。
その後、1999年にWiFi Allianceが設立され、WiFi技術の普及と互換性の確保が推進されました。
主要なWiFiの進化:
Year | WiFi Alliance | IEEE | 進化内容 |
1997年 | ー | 802.11 | 2.4GHz帯を使用し、最大2 Mbpsの速度を提供。 |
1999年 | ー | 802.11b | 2.4GHz帯を使用し、最大11 Mbpsの速度を提供。家庭や小規模オフィスでの普及開始。 |
1999年 | ー | 802.11a | 5 GHz帯を使用し、最大54 Mbpsの速度を提供。干渉が少なく、より高速な通信が可能。 |
2003年 | ー | 802.11g | 2.4 GHz帯を使用し、最大54 Mbpsの速度を提供。802.11bと後方互換性を持つ。 |
2009年 | WiFi4 | 802.11n | 最大600 Mbpsの速度を提供。MIMO (Multiple Input Multiple Output) 技術を導入。 |
2014年 | WiFi5 | 802.11ac | 最大1 Gbps以上の速度を提供。5 GHz帯での高速通信を実現。 |
2021年 | WiFi6/6E | 802.11ax | 最大9.6 Gbpsの速度を提供。効率的な帯域幅の利用と多ユーザーの同時接続を強化。 |
2024年(Plan) | WiFi7 | 802.11be | 最大46 Gbpsの速度を提供。MLO (Multi Link Operation) 技術を導入し遅延改善。 |
WiFi技術は、ますます高速で信頼性の高い接続を提供するよう進化を続け、 現在ではIoTデバイス、スマートホーム、ストリーミングサービスなど、多岐にわたる用途で利用されています。
WiFiの技術的な基礎
無線通信の基礎
無線通信は、電磁波(電波)を使用して情報を送受信する技術です。 無線通信の技術は、空間を介して無線信号を伝達することで、有線ケーブルが不要な通信手段を提供します。
無線通信の基礎は、以下の主要なコンポーネントと概念から成り立っています。
コンポーネント概念:
コンポーネント | コンポーネント概念 |
電磁波(電波) | 無線通信は電磁波を利用します。電磁波は電場と磁場の変動によって形成され、光の速さで伝播します。無線通信で使用される電磁波は、ラジオ波からマイクロ波の数Hzから数GHzの低周波数帯域に限定され電波と呼ばれます。 |
周波数 | 周波数は、電磁波が1秒間に繰り返す振動の回数を表し、ヘルツ (Hz) で測定されます。無線通信では、特定の周波数帯が使用されます。これにより、異なる通信システムが干渉することなく共存できます。 |
送信(機)と変調 | 送信(機)側では、送信される情報を電磁波(電波)に載せるプロセスである変調を実施します。一般的な変調方式には、振幅変調 (AM)、周波数変調 (FM)、位相変調 (PM) などがあります。WiFiでは、主にOFDM (Orthogonal Frequency-Division Multiplexing) が使用されます。 |
受信(機)と復調 | 受信(機)側では、アンテナが電磁波(電波)を受け取り、変調された信号を復調して元の情報に戻します。これには、受信(機)側が信号を解析し、ノイズを除去するプロセスが含まれます。 |
無線通信の構成
周波数帯とチャネル幅
WiFiの無線通信では、特定の周波数帯が利用され、これにより複数のデバイスが同時に通信できます。以下に、WiFiで使用される主な周波数帯とチャネル幅について説明します。
周波数帯の特徴:
周波数帯 | 特徴 |
2.4GHz帯 | ・周波数範囲: 2.4 GHz(2.400 GHz〜2.4835 GHz) ・広いカバレッジ: 低い周波数のため、信号が障害物を通過しやすく、広い範囲でカバーできます。 ・干渉: 多くの家庭用デバイス(例:電子レンジ、Bluetoothデバイス)や他のWiFiネットワークもこの帯域を使用するため、干渉が多くなる可能性があります。 ・データ速度: 最大速度はWiFi4(IEEE 802.11n)の場合で最大600 Mbps、IEEE 802.11gの場合で最大54 Mbpsと、5 GHz帯や6 GHz帯に比べて低速です。 ・利用規格: IEEE 802.11b/g/n が対応。 |
5GHz帯 | ・周波数範囲: 5 GHz(5.150 GHz〜5.825 GHz) ・速度と性能: より高い周波数帯域のため、データ転送速度が速く、帯域幅も広いため高スループットが可能です。WiFi5(IEEE 802.11ac)やWiFi6(IEEE 802.11ax)で特にその性能が顕著です。 ・干渉: 2.4 GHz帯よりも使用されるデバイスが少なく、干渉が少ないため、より安定した接続が可能です。 ・カバレッジ: 高い周波数のため、障害物や壁を通過しにくく、カバレッジ範囲が狭くなることがあります。 ・利用規格: IEEE 802.11a/n/ac/ax/be が対応。 |
6GHz帯 | ・周波数範囲: 6 GHz(5.925 GHz〜7.125 GHz) ・最新技術: WiFi6E(IEEE 802.11ax)/WiFi7(IEEE 802.11be)に対応し、最も新しい周波数帯域で、追加の帯域幅と低遅延を提供します。 ・干渉の少なさ: 現在のところ、他の無線デバイスの使用が少ないため、干渉が非常に少なく、非常にクリーンな信号環境が提供されます。 ・速度と容量: 高いデータ転送速度と低遅延を実現するため、非常に高いパフォーマンスを提供します。 ・カバレッジ: 5 GHz帯と同様に、高い周波数のためカバレッジ範囲が狭く、障害物による信号減衰が大きいです。 ・利用規格: IEEE 802.11ax/be が対応。 |
チャネル幅の特徴:
チャネル幅 | 特徴 |
20MHz | ・データ速度: 低速。 ・干渉の少なさ: 幅が狭いため、干渉が少なく、安定した接続が可能です。 ・カバレッジ: 信号の広がりが狭く、障害物に対する耐性が高い。 ・使用: 幅広いWiFi規格で利用可能。 ・対応規格: IEEE 802.11a/g/n/ac/ax/be が対応。(IEEE 802.11b: 22MHz) |
40MHz | ・データ速度: 中速。 ・干渉の可能性: 20 MHzチャネルの2倍の幅を使用するため、干渉のリスクが増します。 ・カバレッジ: 20 MHzよりもカバレッジが狭くなる可能性がありますが、速度は向上します。 ・対応規格: IEEE 802.11n/ac/ax/be が対応。 |
80MHz | ・データ速度: 高速。 ・干渉のリスク: より広い帯域幅を使用するため、干渉のリスクがさらに高まりますが、速度も大幅に向上します。 ・カバレッジ: チャネル幅が広いため、カバレッジは狭くなりやすいです。 ・対応規格: IEEE 802.11ac/ax/be が対応。 |
160MHz | ・データ速度: 非常に高速。 ・干渉のリスク: 幅広いため干渉の可能性が非常に高いですが、データ転送速度が大幅に向上します。 ・カバレッジ: カバレッジは狭くなる傾向があります。 ・対応規格: IEEE 802.11ac/ax/be が対応。 |
320MHz | ・データ速度: 超高速。 ・干渉のリスク: 非常に広い帯域幅を使用するため、干渉のリスクが最大で、利用する環境を選びます。 ・カバレッジ: 最もカバレッジが狭くなりますが、極めて高いデータ転送速度を提供します。 ・対応規格: IEEE 802.11be が対応。 |
まとめ
今回は、WiFiの基本知識・WiFi基本概要として「WiFiとは何か」、「WiFiの歴史と進化」、 WiFiの技術的な基礎として「無線通信の基礎」、「周波数帯とチャネル幅」に 焦点を当てて解説しました。
次回は『Wi-Fiの技術的な仕組み』と題し、 Wi-Fiの主要技術要素とその技術的特徴について詳しく説明する予定です。