STマイクロエレクトロニクス社製MCU搭載リファレンスボード | 技術コラム
概要
ネクスティ エレクトロニクスの開発部隊による技術コラムです。
当社取り扱い商材を活用したハードウェア開発の内容を発信します。
今回は、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)製MCUを搭載した、音声系、無線系(Wi-Fi) を利用可能なネクスティ エレクトロニクスオリジナルのリファレンスボードを紹介します。 多機能かつ、コンパクトな基板設計を目指して開発しました。
STM版リファレンスボードの基本構成
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開発背景
ネクスティ エレクトロニクスは、エレクトロニクス商社として多種多様な商材を取り扱っているため、その強みを生かして、オリジナルリファレンスボード開発をしています。
このリファレンスボードは、
- 音声系(音声認識・音声合成)
- 非接触によるUI(ジェスチャーセンサー)
- 無線系(Wi-Fi/Bluetooth、LTE-M)、カメラ
などを接続し、さまざまな分野・産業で活用出来るようリファレンスボードの開発を実施しました。
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リファレンスボードのコンセプト
STM版リファレンスボードは、以下のコンセプトで設計しています。
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1.マイク、ヘッドホンまたはスピーカーを接続可能
オーディオジャックを搭載しているため、既製品を接続可能。 -
2.Wi-Fi/Bluetoothモジュールを接続可能
無線系(Wi-Fiなど)の一部インターフェースに対応。 -
3.USBカメラやUSBデバイス機器を接続可能
USBデバイス、ホスト機能に対応。 -
4.I2C, SPI, UARTインターフェースのコネクター搭載
各インターフェースに対応したセンサーなどを接続可能。 -
5.コンパクトな基板サイズ
基板サイズは70mm x 70mmで手のひらサイズ。
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1.マイク、ヘッドホンまたはスピーカーを接続可能
リファレンスボードの全体ブロック図・搭載部品
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全体ブロック図
USB Type-Cコネクター(PD非対応)から電源を供給し、基板内部で3.3V(デジタル用、アナログ用)と1.8Vを生成しています。
下図中央にあるSTM製MCU(STM32H753)が、さまざまなICと接続されています。 また、リファレンスボードは下記のような機能を搭載し、多種多様な機器と接続可能です。
- USB miro-ABコネクターx2、
- microSDカードスロットx1、
- Audioジャックx1、
- M.2コネクター(E-key)x1、
- 多様なインターフェースを出力可能な汎用ピンヘッダー合計70本
LDO(STM) / DC/DC(STM) / LDO(STM) / MCU(STM) / SDRAM(マイクロンテクノロジー) / NOR Flash(マイクロンテクノロジー) / Level Shifter(NXPセミコンダクターズ) / Audio Codec(アナログ・デバイセズ)
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MCU(STM32H753)とは
STM32H753xIデバイスは、高性能なArm® Cortex®-M7 32ビットRISCコアを基にして、最大480 MHzで動作します。
このコアは、倍精度(IEEE 754準拠)および単精度のデータ処理命令をサポートする浮動小数点ユニット(FPU)を備えています。また、DSP命令のフルセットとメモリ保護ユニット(MPU)をサポートし、アプリケーションのセキュリティを強化しています。
STM32H753xIデバイスには、
- 2 Mバイトのデュアルバンクフラッシュメモリ
- 最大1 MバイトのRAM(192 KバイトのTCM RAM、最大864 KバイトのユーザーSRAM、4 KバイトのバックアップSRAMを含む)
が組み込まれ、APBバス、AHBバス、2x32ビットのマルチAHBバスマトリックス、内部および外部メモリアクセスをサポートするマルチレイヤーAXIインターコネクトに接続された多様なI/Oおよび周辺機器を備えています。
このMCUは、
- 3x ADC
- 2x DAC
- 2x 超低消費電力コンパレータ
- 低消費電力RTC
- 高解像度タイマー
- 12x 一般用途16ビットタイマー
- モーター制御用の2x PWMタイマー
- 5x 低消費電力タイマー
- 乱数生成器(RNG)、および暗号化アクセラレーションセルを提供します。
また、外部シグマデルタ変調器(DFSDM)用の4つのデジタルフィルタをサポートし、標準および高度な通信インターフェースも備えています。
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Core
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●32-bit Arm® Cortex®-M7コア
●ダブル精度FPU(浮動小数点演算ユニット)
●L1キャッシュ:
- データキャッシュ: 16 Kbytes
- 命令キャッシュ: 16 Kbytes
●最大動作周波数: 480 MHz
●メモリ保護ユニット(MPU)搭載
●性能: 1027 DMIPS / 2.14 DMIPS/MHz(Dhrystone 2.1)
●DSP命令のサポート
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●32-bit Arm® Cortex®-M7コア
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Memory
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●フラッシュメモリ: 2 Mbytes(読み書き同時サポート)
●RAM: 1 Mbyte
- TCM RAM: 192 Kbytes
・ITCM RAM: 64 Kbytes
・DTCM RAM: 128 Kbytes(時間的に重要なルーチン用)
- ユーザーSRAM: 864 Kbytes
- バックアップドメイン内SRAM: 4 Kbytes
●デュアルモードQuad-SPIメモリインターフェース: 最大133 MHzで動作
●柔軟な外部メモリコントローラー:
- 最大32ビットデータバス
- 対応メモリ: SRAM、PSRAM、SDRAM/LPSDR SDRAM、NOR/NANDフラッシュメモリ(同期モードで最大100 MHz)
●CRC計算ユニット
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●フラッシュメモリ: 2 Mbytes(読み書き同時サポート)
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Communication Peripherals
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●4× I2C FM+インターフェース(SMBus/PMBus)
●4× USARTs / 4× UARTs(ISO7816インターフェース, LIN, IrDA最大12.5 Mbit/s)、1× LPUART
●6× SPI(3つは内部オーディオPLLまたは外部クロックを介したデュプレックスI2Sオーディオクラス精度1× I2S(LPドメイン内、最大150 MHz)
●4× SAI(シリアルオーディオインターフェース)
●SPDIFRXインターフェース
●SWPMIシングルワイヤプロトコルマスターインターフェース
●MDIOスレーブインターフェース
●2× SD/SDIO/MMCインターフェース(最大125 MHz)
●2× CANコントローラー(2つはCAN FD対応、1つはTT-CAN)
●2× USB OTGインターフェース(1 FS、1 HS/FS)
●Ethernet MACインターフェース(DMAコントローラー付き)
●HDMI-CEC
●8ビットから14ビットのカメラインターフェース(最大80 MHz)
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●4× I2C FM+インターフェース(SMBus/PMBus)
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Analog Peripherals
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●3× ADC(アナログ-デジタルコンバータ)
- 最大解像度: 16ビット
- 最大36チャンネル
- 最大サンプリングレート: 3.6 MSPS
●1× 温度センサー
●2× 12ビットD/Aコンバータ(1 MHz)
●2× 超低消費電力コンパレータ
●2× オペアンプ(帯域幅: 7.3 MHz)
●1× デジタルフィルタ(シグマデルタモジュレータ用 DFSDM)
- チャンネル数: 8
- フィルタ数: 4
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●3× ADC(アナログ-デジタルコンバータ)
外部インターフェース1
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リファレンスボードのコネクター
リファレンスボードはUSB micro-ABコネクターを2つ、microSDカードスロットを1つ、Audioジャックを1つ、M.2コネクターを1つ、汎用インターフェースを合計70本(次セクション参照)を搭載しており、外部のセンサーやUSBカメラなど、さまざまなデバイスと接続することが可能です。
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USB
- FS:USB2.0フルスピード(max.12Mbps)対応
- HS:USB2.0ハイスピード(max.480Mbps)対応
- ホスト機能、デバイス機能を切り替え可能
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microSD
- SD2.0対応(信号電圧3.3V、max.12.5MB/s)
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Audio
- イヤホン出力/マイク入力可能(CTIA規格のみ接続可能)
- I2S/LJ/RJ/TDMデジタルオーディオインタフェース対応
- ステレオ出力、サンプリング周波数max.96kHzまで対応
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Wi-Fi/Bluetooth
- 背面にあるM.2コネクターにWi-Fiモジュールおよび、ネクスティ エレクトロニクスで開発したLTE-M基板を搭載することが可能です。対応しているEmbedded Artist製のWi-Fiモジュールは、下表の通りです。
※技適対応/非対応についてはお問い合わせください。
Module Name 1ZM M.2 Module 1LV M.2 Module 1MW M.2 Module 1DX M.2 Module Wi-Fi Wi-Fi 5
802.11 a/b/g/n/acWi-Fi 4
802.11 a/b/g/n/
ac-friendly™Wi-Fi 5
802.11 a/b/g/n/acWi-Fi 4
802.11 a/b/g/nBluetooth Bluetooth 5.1
BR/EDR/LEBluetooth 5.0
BR/EDR/LEBluetooth 5.0
BR/EDR/LEBluetooth 4.2
BR/EDR/LE - 背面にあるM.2コネクターにWi-Fiモジュールおよび、ネクスティ エレクトロニクスで開発したLTE-M基板を搭載することが可能です。対応しているEmbedded Artist製のWi-Fiモジュールは、下表の通りです。
外部インターフェース2
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汎用インターフェース
汎用ピンヘッダーを通じて、下記インターフェースを使用することが可能です。
- SPI:max.2チャネル
- I2C:max.1チャネル
- UART:max.4チャネル
- USART:max.1チャネル
※全て信号電圧は3.3V
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SPI
- マスターおよびスレーブモードで最大150 Mbit/sの通信が可能
- Half-Duplexモード、Full-Duplexモード、Simplexモード対応
- フレームは4ビットから16ビットまで設定可能
- NSSパルスモード、TIモードをサポート
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I2C
- スレーブおよびマスターモード、マルチマスタ機能
- スタンダードモード(Sm)、ビットレート最大100 kbit/s対応
- ファストモード(Fm)、ビットレート最大400 kbit/s対応
- ファストモードプラス(Fm+)、ビットレート最大1 Mbit/s対応
- 7ビットおよび10ビットアドレッシングモード、複数の7ビットスレーブアドレス対応
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UART
- DMAを使用した連続通信対応
- データ長は7,8,9ビット対応
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USART
- ハードウェアフロー制御対応
- DMAを使用した連続通信対応
- 同期通信対応
- データ長は7,8,9ビット対応
まとめ
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今回は、ネクスティ エレクトロニクスの開発部隊が開発した、STM製MCUを搭載したリファレンスボードを紹介しました。
今後、このリファレンスボードを使用したソフトウェア開発(FreeRTOSを使用した実装例)や、その他開発したボードを紹介する予定です。
記事の内容に興味を持たれた方や、さらに深い情報を求めている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。皆様からのご質問やご意見をお待ちしております。 -
デモの紹介
今回ご紹介したリファレンスボードを使用したデモの例を以下に示します。
- ジェスチャーセンサーを接続して、スワイプ操作/形状認識
- 人感センサーを接続して、人流カウント
ネクスティ エレクトロニクスの取り組み
株式会社ネクスティ エレクトロニクスは、豊田通商グループのエレクトロニクス事業の中核企業として、カーエレクトロニクスの分野においてトップクラスの規模を誇ります。
技術と商材を核として、幅広い分野でお客さまや世の中のニーズに応え、 社会課題のソリューションを提供し、より善き社会の実現に貢献していきます。
また、ネクスティ エレクトロニクスの開発部隊では、取り扱い商材を活用した自社開発、受託開発(ハードウェア、ソフトウェア開発)なども実施しています。
お客様の困りごとなどの解決なども含め寄り添って対応いたしますので、お気軽にお問合せください。