GNSS技術コラム

GNSSとは?

GPSと何が違う?世界各国が運用する衛星について

GNSSとは?

GNSSとは、「Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム)」の略で、全世界で運用されている測位衛星システムの総称です。
一般的には、USAのGPSが有名ですが、他国でも様々な衛星が運用されています。
代表的なGNSS衛星は下図の通りです。
各衛星システムごとに、全世界/地域限定と2種類のカバー領域があります。

代表的なGNSS衛星の一覧

各国のGNSS衛星一覧

現在運用されている代表的なGNSS衛星の概要は下記の通りです。
衛星システムにより運用衛星数、種類が異なります。
次章より、各衛星システムについて紹介します。

衛星システム 運用国 運用衛星数 衛星軌道
GPS USA 24機 地球周回
GLONASS Russia 24機 地球周回
Galileo EU 24機 地球周回
BeiDou China 30機 地球周回/静止軌道
QZSS Japan 4機 日本上空/静止軌道
NAVIC India 7機 インド上空/静止軌道

GPSとは?

GPSとは、「Global Positioning System」の略で、米国が運用している衛星システムです。
運用母体は国防総省、軍事用に開発された衛星の一部を民間用に転用して運用されています。
衛星運用開始は1980年です。
衛星は高度20200kmを6つの軌道、各軌道に4衛星が周回し、計24機で運用されます。
※実際には、メンテナンスやトラブルを想定し予備の衛星も周回しています。
衛星は地球を1周約11時間58分で周回しています。

衛星 運用母体 衛星構成 高度
GPS 米国国防総省 6軌道面×4機(計24機) 20200km

GLONASSとは?

GLONASSとは、「GLObal'naya NAvigatsionnaya Sputnikovaya Sistema (ラテン語)」の略で、Russiaが運用している衛星システムです。
運用母体は国防総省、軍事用に開発された衛星の一部を民間用に転用して運用されています。
衛星運用開始は1993年です。
衛星は高度19100kmを3つの軌道、各軌道に8衛星が周回し、計24機で運用されています。
※実際にはメンテナンスやトラブルを想定し予備の衛星も周回しています。
衛星は地球を1周:約11時間15分で周回しています。
衛星は運用開始当時から衛星寿命および機能拡充を目的に時系列で以下4タイプが存在します。
 ・GLONASS:寿命により退役
 ・GLONASS-M:運用中
 ・GLONASS-K1:運用拡大中
 ・GLONASS-K2:計画中

衛星 運用母体 衛星構成 高度
GLONASS Russia国防省 3軌道面×8機(計24機) 19100km

BeiDouとは?

BeiDouとは、「BeiDou Navigation Satellite System:BDS」の略で、中国が運用している衛星システムです。
中国政府が運用母体となり、軍事用に開発された衛星の一部を民間用に転用して運用されています。
衛星運用開始は2020年(全世界対応)です。
衛星は高度21500kmを周回し、3つの軌道、各軌道に8衛星が周回しているのに加え、静止軌道および傾斜地球同期軌道を加えて計30機で運用されています。
※静止軌道:赤道上空に配置され、地球の自転と同じ速度で移動
※傾斜地球同期軌道:赤道に対し一定の傾斜を持たせ、地球の自転と同じ速度で移動
※実際にはメンテナンスやトラブルを想定し予備の衛星も周回しています。
衛星は地球を1周:約12時間、静止軌道/傾斜地球同期軌道は約24時間で周回しています。
参考までですが、BeiDouは運用開始から以下の経過を経て全世界対応となりました。
 ・BDS-1:中国限定
 ・BDS-2:アジア太平洋地域限定
 ・BDS-3:全世界対応

衛星 運用母体 衛星構成 高度
BeiDou 中国政府 3軌道面×8機
静止軌道×3機
傾斜地球同期軌道×3機
(計30機)
21500km

Galileoとは?

Galileoは「Galileo Global Navigation Satellite System」の略で、EUが運用している衛星システムです。
運用母体は欧州連合(EU)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で開発・運用しています。
GalileoはGPS/GLOANSS/BDSとは違い民間運用を目的に開発されました。
そのため、Galileo衛星は民間専用となっており、他の衛星に比べ軽量であるというメリットがあります。
※1つのロケットで複数台打ち上げが可能
衛星運用開始は2020年です。
衛星は高度23000kmを3つの軌道面が、各軌道面に8衛星が周回、計24機で運用されています。
※実際にはメンテナンスやトラブルを想定し予備の衛星も周回しています。
衛星は地球を1周:約14時間で周回しています。

衛星 運用母体 衛星構成 高度
Galileo 欧州連合(EU)
欧州宇宙機関(ESA)
3軌道面×8機(計24機) 23000km

QZSSとは?

QZSSとは、「Quasi-Zenith Satellite System」の略で、日本が運用している衛星システムです。
運用母体は内閣府、JAXA、日本近海の衛星測位精度向上を目的に運用されています。
衛星運用開始は2018年です。 衛星は高度32000kmを準天頂軌道:3機、静止軌道:1機、計4機で運用されています。
準天頂軌道の運用の特徴として、
 ・衛星は日本上空⇔豪州上空間を8の字に描く軌道で周回する
 ・日本上空(天頂)に必ず1機が配置される
の2点が挙げられます。
衛星は地球を1周:約24時間で周回しています。
※日本上空を8時間、日本以外を16時間かけて周回しています。

衛星 運用母体 衛星構成 高度
QZSS 内閣府、JAXA 準天頂軌道×3機
静止軌道×1機
32000km

NAVICとは?

NAVICとは、「Navigation with Indian Constellation」の略で、Indiaが運用している衛星システムです。
運用母体はインド宇宙研究機関、India近海の衛星測位精度向上を目的に運用されています。
衛星運用開始は2018年です。
衛星は高度32000kmを、静止軌道:3機、傾斜地球同期軌道:4機、計7機で運用されています。
特徴はIndia上空(天頂)に少なくとも4機以上の衛星が配置されるように運用されています。
衛星は地球を1周:約24時間で周回しています。

衛星 運用母体 衛星構成 高度
NAVIC インド宇宙研究機関 静止軌道×3機
傾斜地球同期軌道×4機
(計7機)

35700km

まとめ

本コラムでは、現在運用されている代表的なGNSS衛星の概要を紹介しました。
次回は実際に衛星を利用した測位方法に関する説明を予定しています。
後日の公開をお楽しみに。