NXPの車載統合マイコン
S12 MagniV®の魅力を徹底解説

車載システムの電動化に伴い、車両の軽量化と省スペース化を実現するためにECU(電子制御ユニット)の小型化が求められています。ECU開発メーカーがECUの小型化と短期開発を実現するには、設計の単純化、開発プロセスの効率化、プロトタイピングやテスト工程の加速などが課題となっています。

このページでは、このような悩みを抱えるECU開発メーカー向けに、NXPの統合マイコンS12 MagniVの魅力について解説していきます。

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S12 MagniVとは

S12 MagniVはデジタル・不揮発メモリー・高耐圧アナログをワンチップに搭載

統合マイコンS12 MagniVは、異なる3つのテクノロジー「(CPUなどの)デジタルロジック」「不揮発メモリー」「高電圧アナログ」をワンチップに搭載した機能集積型マイコンです。

統合マイコンを使うと、通常の汎用マイコンを使った場合と比べて複数のアナログ部品を実装する必要がなくなるので、ECUを小型化できます。

「デジタル+不揮発メモリ+高電圧アナログテクノロジーをワンチップに集積」の図解イメージ

S12 MagniVのテクノロジー

S12 MagniVは「マイコン」「レギュレーター」「LIN/CAN通信PHY」「モータードライバー」のワンチップソリューションを提供し、アクチュエーター、センサーなどのアプリケーションのシステムコストおよび実装面積の最適化を実現します。

「MCU、VREG、LIN/CAN PHY、Motor Driverをワンチップに集約」の図解イメージ

S12 MagniVのワンチップソリューション

S12 MagniVのメリット|ECUの小型化および開発加速に貢献

汎用マイコンを統合マイコンS12 MagniVに置き換えることでどのようなメリットがあるのでしょうか?

電動化が進む車載分野において、車両の軽量化と空間効率の最適化を図るために、ECU開発メーカーにはECUの小型化と短期開発が求められています。S12 MagniVは、このような車載分野での小型化と短期開発のニーズに応えます。

例として、CANで外部と通信してLEDの点灯を制御するECUを考えてみましょう。

従来のソリューションは汎用マイコン+複数の外付けアナログ部品であるのに対し、S12 MagniVソリューションはワンチップに統合されている

汎用マイコンとS12 MagniVの部品数の比較

通常の汎用マイコンを使用する場合、制御や演算を行うための汎用マイコン、マイコンや周辺部品に必要な電源を供給するレギュレーターIC、CAN通信を行うためのPHY、LEDを駆動するためのドライバICなど複数の部品をPCB(プリント基板)上に搭載する必要がありました。

S12 MagniVはこれらの機能をワンチップで実現できるので、PCBの部品点数を削減することができるのです。

S12 MagniVを使用したモーター制御アプリケーション向けのソリューション例も見てみましょう。

NXPセミコンダクターズの「3相PMSM電動ウォーターポンプのリファレンスデザイン」基盤写真

3相PMSM電動ウォーターポンプのリファレンスデザイン

NXPセミコンダクターズの3相PMSM電動ウォーターポンプのブロック図イメージ

3相PMSM電動ウォーターポンプのブロック図

これは、NXPの3相永久磁石同期モーター (PMSM) 電動ウォーターポンプのリファレンスデザインです。

S12ZVMファミリーのS12ZVML64を搭載しています。S12ZVL64のパッケージが64LQFP-EP (10mmx10mm) なので、S12 ManiVを使うことでPMSMアプリケーションをとてもコンパクトにPCB上に実装できることがわかります。

このように、S12 MagniVにはECU開発において 実装面積の低減(小型化)、BOMコストの低減、製造プロセスの効率化・製造品質の向上、システム開発の簡素化 などのベネフィットがあるのです。

実装面積の低減、製造効率・品質の向上、BOMコストの低減、システム開発の簡素化でPCBの小型化及び電動化の開発加速に貢献

S12 MagniVのベネフィット

S12 MagniVの製品シリーズ

S12 MagniV ポートフォリオ

機能集積型マイクロコントローラにて20年以上の経験、モーター制御及びインターフェイスノードとして業界一の機能集積型マイコンポートフォリオなど

S12 MagniVの特徴

NXPは集積型マイコンで20年以上の経験を持っており、モーター制御及びインターフェイスノード向け集積型マイコンでは業界一のポートフォリオを有しています。

S12 MagniVの製品シリーズを大きく分けると、モーターコントロールとセンサーインターフェイス向けの2種類です。

モーターコントロール向けのシリーズには、リレー制御モーターに最適なS12VRファミリー、DC/ブラシレスDCモーターに最適なS12ZVMファミリーがあります。

センサーインターフェイス向けのシリーズには、CANノードに最適なS12ZVCファミリー、LINノードに最適なS12ZVLファミリーがあります。

S12 MagniVシリーズは、NXPが独自に開発した16bitコアS12またはS12Zを搭載し、最大256KBの幅広い内蔵メモリ・ライナップを有し、LIN/CAN PHYを内蔵しています。車載部品に求められるAEC-Q100規格に対応しており、最大Ta 150℃、機能安全レベルASIL-Bまで対応する製品も用意しています。開発環境も充実しており、OEMからの要求や信頼性要件にも対応しています。

S12 MagniV シリーズ・ラインナップ

S12 MagniVシリーズ・ラインナップを御覧ください。

NXPセミコンダクターズの「S12 MagniV シリーズ・ラインナップ」イメージ

S12 MagniV シリーズ・ラインナップ

中央のFeature列に製品の特徴が記載されており、製品ファミリー間での仕様の違いを比較できます。

中央から左がセンサーインターフェイス向け、右がモーターコントロール向けのファミリーです。

製品ファミリーの違いを少し見てみましょう。

例えば、最も下の2行のモータードライバー機能「Gate Driver」「Relay Driver」は、モーターコントロール向けファミリーにだけ搭載されています。つまり、モータードライバーを搭載していないファミリーがセンサーインターフェイス向けに分類されます。

下から4行目の「Comm . PHY」は、搭載している通信PHYの種類がLINまたはCANのどちらかを示しています。

どの製品ファミリーにすればいいか選ぶ際には、まずこちらのラインナップを御覧ください。

S12 MagniVシリーズの仕様をもっと細かく比較したい方は、NXP公式サイトの パラメトリックサーチ をご利用ください。

NXPの長期製品供給プログラム Product Longevity

NXPの長期製品供給プログラムは、製品の安定的な供給を保証することを目的としており、自動車向けの指定対象製品では最低15年間の製品供給が保証されます。この長期製品供給の期間は、あくまで最低限の期間であって、状況によって期間が延長される場合があります。
Product Longevity logo

S12 MagniVシリーズは最低15年間の製品供給プログラムの対象です。

S12 MagniVシリーズで最初にリリースされたS12VRファミリーは2011年から供給を開始しています。供給から15年後の2026年以降の製品供給に不安を覚えるかもしれませんが、ご安心ください。既に最低製品供給プログラムの期間延長がS12 MagniVシリーズに実施されています。これにより長期間にわたって安定供給してきたS12 MagniVを安心してご使用いただくことができます。

本記事を執筆中の2024年6月20日時点でS12VRシリーズの最低製品供給プログラム終了日は2033年まで延長されています。

S12 MagniVの長期製品供給プログラム
製品供給開始日長期製品供給プログラムの終了日
S12VR2011年12月2033年3月
S12ZVM2014年3月2036年3月
S12ZVL2015年1月2036年3月
S12ZVC2015年4月2036年3月

NXPの長期製品供給プログラムの最新の状況はNXP公式サイト Product Longevity でご確認いただけます。

S12 MagniVの代表製品の特徴をワンページャーで紹介

ここからは代表的な製品の特徴をワンページャーで説明していきます。

S12VR|リレー駆動のDCモーター

NXPセミコンダクターズの「S12VR Family」イメージ

S12VR Family

S12VRは、リレー駆動のDCモーターに最適なデバイスです。

推奨アプリケーションは、車載パワーウィンドウ、サンルーフ、LINスレーブノードなど。

  • CPUにはNXP独自の16bit S12コアを搭載し、最大バス速度は25MHzです。内蔵ROMは最大64KBです。
  • レギュレーターを内蔵しており、マイコンの電源入力ピンに車載12Vバッテリーを直接入力して動作できます。
  • 外部システムとの通信用にLIN PHYを内蔵しているので外付けは不要です。
  • 2つのローサイド・ドライバーを搭載していますので、外付けリレーを駆動して双方向ブラシDCモーターを制御できます。LEDとスイッチへの電源供給に使用できるハイサイド・ドライバーを搭載しています。
  • プログラマブル抵抗電圧分圧器を内蔵した12V入力が可能なHigh Voltage Input端子を搭載しています。HVI入力は内部でADCに接続されているので、外部に抵抗分圧器を設けることなく12V系の信号を監視できます。
  • メモリー、パッケージ、使用温度などのオプションは右下に記載しています。この製品は最大Ta=125℃です。

もっと詳しく知りたい方は NXPのS12VR公式サイト を御覧ください。

S12ZVM|センサーレスBLDC、PMSM

NXPセミコンダクターズの「S12ZVM Family」イメージ

S12ZVM Family

S12ZVMは、センサーレスBLDC、PMSMなどに最適なデバイスです。

推奨アプリケーションは、車載冷却ファン、HVACブロワーなど。

  • CPUにはNXP独自の16bit S12Zコアを搭載し、最大バス速度は50MHzです。
  • 内蔵ROMは最大256KBです。
    • オプションでCAN PHYを内蔵した製品もあります。
  • モーター駆動用に6chゲート・ドライバーを搭載しています。ゲートドライブ能力はmax.150nC、ハイサイド用チャージポンプとブートストラップダイオードを内蔵しています。
  • プログラマブルな12bitリストベースADCを搭載しており、モーターを駆動するPWMと同期しながらモーター電圧の測定が可能です。
  • 電流センス用アンプを2つ搭載しています。
  • メモリー、パッケージ、使用温度などのオプションは右下に記載しています。この製品は最大Ta=150℃です。

もっと詳しく知りたい方は NXPのS12ZVM公式サイト を御覧ください。

S12ZVL|スイッチやセンサー用LINノード

NXPセミコンダクターズの「S12ZVL Family」イメージ

S12ZVL Family

S12ZVLは、スイッチやセンサーのLINノードなどに最適なデバイスです。こちらの製品はモータードライバーを省くことでチップの小型化を実現しています。

推奨アプリケーションは、センサー、アクチュエーター、スイッチパネルなど。

  • CPUにはNXP独自の16bit S12Zコアを搭載し、最大バス速度は32MHzです。
  • 内蔵ROMは最大128KBです。
  • 外部センサーの電源供給用に20mAまでソース可能なGPIO(EVDD)、外部LEDから25mAまでシンク可能なGPIO(NGPIO)を搭載しています。
  • メモリー、パッケージ、使用温度などのオプションは右下に記載しています。この製品は最大Ta=150℃です。

もっと詳しく知りたい方は NXPのS12ZVL公式サイト を御覧ください。

S12ZVC|センサーやアクチュエーター用CANノード

NXPセミコンダクターズの「S12ZVC Family」イメージ

S12ZVC Family

S12ZVCは、センサーやアクチュエーターのCANノードなどに最適なデバイスです。こちらの製品もモータードライバーを省くことでチップの小型化を実現しています。

推奨アプリケーションは、センサー、アクチュエーター、CANベースのユーザインタフェースなど。

  • CPUにはNXP独自の16bit S12Zコアを搭載し、最大バス速度は32MHzです。
  • 内蔵ROMは最大192KBです。
  • 外部システムとの通信用にCAN PHYを内蔵していますので、外付けは不要です。
  • メモリー、パッケージ、使用温度などのオプションは右下に記載しています。この製品は最大Ta=150℃です。

もっと詳しく知りたい方は NXPのS12ZVC公式サイト を御覧ください。


S12 MagniVの主な製品ファミリーの特徴をワンページャーで説明してきました。

ニーズにあったS12 MagniVを選ぶ際には、まずモーターコントールかセンサーインターフェイスかを選び、つぎにシリーズ・ラインナップを見てCAN/LIN通信やメモリサイズなどの必要機能を搭載した製品ファミリーがあるかどうかを探してみてください。

S12 MagniVの開発リソース

S12 MagniVの評価ボードおよびソフトウェア開発ツールについてご紹介します。

S12 MagniV評価ボード

基板が緑色の少し大きめの評価ボードは、基板上に多くのスイッチやコネクタなどが実装されています。マイコンのピンモニタ端子も多く配置されているので、汎用性の高いボードといえます。

基板が青色の評価ボードは小型でArduinoに対応しています。マイコンのピンモニタ端子が少ないため、あまり多くのことはできませんが、安価に入手できます。

S12 MagniVのソフトウェア開発ツール

S12 MagniVのデバッガーはPEmicroのUniversal Multilinkシリーズを推奨しています。

型番にFXがついているものは、通信速度が早いモデルです。

S12 MagniVのソフトウェア開発は、NXPが提供する統合開発環境CodeWarrior®を使用します。CodeWarriorでは、Cコーディングとコンパイル、デバッグ、Flashプログラミングができます。

S12コアを搭載するS12ZVRが対応するのはCodeWarrior for HSC12(X) (Classic IDE)、S12Zコアを搭載するS12ZVM/ZVL/ZVCが対応するのはCodeWarrior for MCUs (Eclipse IDE) です。同じMagniVシリーズでもファミリーによって対応するCodeWarriorのバージョンが異なるので注意してください。

  • 開発IDEと
    ビルドツール
  • CodeWarrior® Development Studio for HCS12(X) Microcontrollers (Classic IDE) v5.2 CW-HCS12X

  • CodeWarrior® for MCUs (Eclipse IDE) - ColdFire®, 56800/E DSC, Qorivva® 56xx, RS08/S08, S12Z - 11.1 CW-MCU10

S12 MagniVの型番命名ルール

最後にS12 MagniVの型番命名ルールをご紹介します。

細かい製品型番の指定の際にご使用ください。

NXPセミコンダクターズの「S12 MagniV Part Numbering」イメージ

S12 MagniV Part Numbering

まとめ

ここまで、デジタル・不揮発メモリー・高耐圧アナログをワンチップに搭載した統合マイコンS12 MagniVの魅力について解説してきました。

S12 MagniVは、車載分野でのECUの小型化と短期開発の要求に応える製品となっていますので、ご興味がありましたらネクスティ エレクトロニクスまでお問い合わせください。

このページと同じ内容の動画もありますのでぜひ御覧ください。