(a)帯域計算
MAX96717のGMSL2シリアル伝送ラインは最大6Gbpsです。
伝送したいデータがこの速度を超えない範囲であることを確認します。
例えば下記の画像データを伝送したい場合を考えます。
- 1920 × 1080 pixel
- YUV422 8bit
- Frame rate 60Hz
一般的な映像信号には有効画素以外に、水平・垂直ブランキング期間が設けられています。ブランキング期間は表示画像としては無効ですが、データとしては送信されますので計算に含める必要があります。ブランキング期間はおおむね有効画素の1.2倍になります。
次の式を使用してPCLK(Pixel Clock)を求めます
PCLK = 1920 × 1080 × 1.2 × 60 = 149.3MHz
伝送する映像の帯域は次の式で計算します
Video Bandwidth = 149.3MHz × 8bit = 1.19Gbps
1.19Gbpsは6Gbpsより小さいためGMSL2で伝送可能ということになります。ただし、実際のGMSL2通信はビデオデータ以外にも様々なデータを共有して送信しており、ビデオデータとして使用できる帯域は6Gbpsよりも低くなります。詳細はユーザーガイドをご確認ください。
(b)GMSL伝送ラインの設計注意点
最大6Gbpsの速度で通信する高速伝送ラインのため、設計においては注意が必要です。
COAXケーブルを使用する際の設計注意点は下記になります
-
レイアウト例です
(c)Line Fault
Line FaultはGMSL伝送ラインの異常を検知する機能です。なお次項で説明するPOCとは同時に使用できません。GMSLラインとLMNx端子およびGNDの間に分圧抵抗を接続することで、下記の異常状態を検知します
- Short to battery
- Short to GND
- Open line
- Line-to-line short
-
下記のように設計を行います
-
STPケーブルの場合は下記のように設計を行います
(d)POC(Power Over Coax)
POCはCOAXケーブルにおいて電源を重畳できる技術です。例えば、小型カメラモジュールのようにサイズ制約で電源ICを搭載することが難しい場合、Deserializer側から電力をCOAXケーブルに重畳し、Serializer側(カメラモジュール)で電力を受け取ることができます。高速通信と電力を同じCOAXケーブルで共有しますが、POCフィルタにより帯域を分けているためお互いに影響を受けません。
POCフィルタはインダクタと抵抗を使います。電源が通過する低周波域と、フォワード・リバースチャンネルが通過する高周波域を分けるようにフィルタ定数を決めます。下図のようなイメージです。
(e)ESD保護素子
GMSLラインにはICに内蔵のESD保護素子があります。この内蔵の保護素子では性能が足りない場合外付けでTVSダイオードを接続します。外付けTVSダイオードに要求される特性は、下記です
- Capacitance of < 0.5pF or less to, prevent degradation of high-speed GMSL2 signal
- Small package footprint lo minimize capacitance
- Low breakdown voltage and low clamping voltage
- Unidirectional, reverse-biased onto, the link
- Two-port component to minimize lane-lane crosstalk